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再建の過程において報道された事実はもちろん、報道されなかった裏話などあらゆることを知っている管財人が書いたものであるため、期待して読みましたが、たとえノンフィクションといえども突っ込んだ話は、守秘義務を重んじる職業柄書きにくいのか、また、読者を作品に引きずり込むことに長けた小説家が書いたものではないこともあり、やや期待はずれでした。

ただし、この作品では、最近読んだ企業再建について書かれた作品にあったとおり、不動産や企業そのものなどの価値（価格）は市場が決めるものである、ということが実践されている。このことから、如何にして机上での時価を上げるか、つまり、如何にして市場での競争を避けるかではなく、まず、市場で評価してもらい、それをどの様にして価値を上げるかを考えることが、不良債権問題の解決において重要であるということを再認識しました。
管財人の立場からのドキュメンタリー
この本は、2000年に破綻した千代田生命の更生管財人団が書いた、いかにして外資との交渉を乗り越えて、生保の倒産処理を行うか、についてのドキュメンタリー小説です。千代田生命の破綻までは、生保の処理は、救済する外資の言いなりになっていた部分が大きいのですが、この交渉では、管財人団の努力もあって、初めて公的資金投入なしで交渉を成功させるという快挙を成し遂げました。交渉においては、千代田生命の資産価値をいかに減価させないように処理を透明かつ迅速に行うことを心がけながら、いかにして外資にのれん価値を認めさせ、千代田生命を高い値段で引き取ってもらえるか、がポイントでした。中心となった管財人団は、法律の専門家で、経済・経営についてはかならずしも専門ではなかったのですが、公的な目的のために、私利を捨てて仕事に打ち込む姿勢に好感を覚えました。不良債権処理には、司法関係者の活躍も目立ちますが、バランス感覚を忘れずに、しかし譲れぬところは守る交渉姿勢を鑑みるに、日本もなかなか捨てたものじゃないな、と思いました。
残念な一冊
近年、事業再生というキーワードが日本経済を席巻している。生保再建というこの本を大きな期待感を抱きながら手にした。